ヒトラーがユダヤ人をホロコーストにした理由

反ユダヤ主義とはいうけれど、そうなった理由がある

「なぜあらゆる人種の中でユダヤ人だけホロコーストの対象となったのか?」
「ヒトラーはなぜユダヤ人を目の敵にしたのか?」

そういった疑問に関する記事になります。(2021/04/02 更新)

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  1. ヒトラーがユダヤ人を大虐殺した理由
  2. 多くのユダヤ人の運命を変えたドイツ革命
  3. ファシズムを産んだユダヤ人と共産主義者
    による大虐殺
  4. ヴェルサイユ条約とハイパーインフレで
    醜悪な鬼が目覚める
  5. 背後からの一突きによるユダヤ人と共産主義への恨み

ヒトラーがユダヤ人を大虐殺した理由

こんな悲劇が現実に起こったとは信じられない。
地下室の脱衣所に併設されたシャワー室の床一面は血だまり、汚物、排泄物で地獄を演出していた。

アウシュヴィッツの悪名高いツィクロンBのガス室

ナチスドイツ率いるヒトラーは反ユダヤ主義を掲げ、大量虐殺したのだ。
しかし、今私が思うのはなぜここまでユダヤ人を殺せたのだろうか?

いくら政治的な理由だとしても600万人という人間を灰にできるものだろうか。

反ユダヤ主義というのは日本ではあまり馴染みがないし、そう言われても意味がわからない。
しかし、反ユダヤ主義は最近始まった話ではなく、遥か古代から存在する。
キリスト教では裏切り者のユダがユダヤ人だったからとか、キリスト教とユダヤ教は敵対関係にあるとか、そんな宗教的なものとは別に、人種差別的な意味合いでも歴史が深い。


もはや反ユダヤ主義の始まりがどこにあるのかはもはや謎としか言えないのよね?
ではヒトラーもそんな昔からある反ユダヤ主義のために大虐殺したのか?

いやいや、ヒトラーが反ユダヤ主義となった理由はもっと身近な歴史的な背景があったからなのよ。
ヒトラーが演説がうまかった事実はあるだろう。
だけどたった1人が壇上で熱っぽく話したところで、次の瞬間から国民全員が反ユダヤ主義になるものだろうか?

強制的に運命を定められたユダヤ人囚人たち

事実として、1945年の第二次世界大戦の終戦を迎えるまで国の政策としてナチスドイツはユダヤ人を絶滅収容所へ輸送した。国民全員が大量虐殺に手を貸した。
これはヒトラーひとりが国民全員をマインドコントロールした結果なのか?

いやそうではなく、当時ナチスドイツの国民全員が反ユダヤ主義で、ヒトラーはそれをただ代弁しただけなのではないか?
そう考えた方が自然だ。

ヒトラーが政権を獲得する1933年から25年ほど時間を巻き戻してみよう。
実はそこにユダヤ人のホロコーストという爆弾の導線があったのだ。

多くのユダヤ人の運命を変えたドイツ革命


1917年、世界中が荒廃した時代だったの。

1914年6月28日、オーストリア=ハンガリー帝国の皇太子がセルビアを訪れた際、ユーゴスラビアの民族主義者がその皇太子を暗殺。
これをきっかけに第一次世界大戦が勃発してたの。

ロシア帝国を含む多くのヨーロッパが総力戦を展開。
その結果、各国の経済はボロボロとなっていった。

ロシア帝国でも例外ではなく、1916年末期に戦争を推し進める帝政に疑問がわきおこっていた。
そんなロシアでラスプーチンが暗殺される。

これについては別記事にまとめてるのでそちらをどうぞ。
>> ミステリー!怪僧ラスプーチンの伝説とは実は捏造だった?


それをきっかけとして労働者階級のウラジミール・レーニンの共産主義運動が帝政を転覆させるという衝撃のニュースが世界を駆け巡る。


一方、当時ドイツ帝国は第一次世界大戦で苦戦を強いられていた。
戦費を絞り出す国内経済は最悪を極め、都市部では各地で暴動に発展する時代となっていた。

そんな時代に労働者階級が共産主義運動によって帝政ロシアが倒れ、ソヴィエト連邦が誕生したというニュースで共産主義の革命の風潮がドイツを襲う。

ドイツ帝国というのは多くの都市国家で構成されていて、そのうちプロイセン王国がドイツ帝国の代表の皇帝を兼ねてた。日本で言うと各地に大名がいて、徳川家がそれを束ねてるって感じ。
当時プロイセン王国のヴィルヘルム2世がちょうど日本でいう徳川慶喜の位置付けだった。


1918年、ドイツでは軍司令部の無策の突撃ばかりで死者を大量生産するだけだった。
そこで1918年11月3日、水兵が作戦遂行を無視する命令違反を起こしたことをきっかけにドイツ帝国全体を巻き込む内戦に突入した。
一般的にはこの混迷の時代をドイツ革命というみたい。
まず、ミュンヘンを首都とするバイエルン王国で革命家クルト・アイスナーよって11月7日ルートヴィッヒ3世が廃位させられ、共産主義によるレーテ共和国が樹立した。このクルト・アイスナーはユダヤ人なのよね。
このユダヤ人は第一次世界大戦のきっかけとなったオーストリアー=ハンガリー帝国がセルビアに送った最後通牒にドイツ帝国が裏で共謀してた証拠文書を公開するという暴挙にでて暗殺されている。


これではドイツを潰そうとしたと恨まれても仕方がないとは思うんだけど。
この共産主義の革命の波は瞬く間にドイツ全土の主要都市国家を襲った。
この革命の中心にいたのがユダヤ人革命家たちだった。

そんな中、プロイセン王国のヴィルヘルム2世は11月28日正式に退位した。
この頃のドイツには社会民主党を中心とする仮政府と共産主義者とユダヤ人革命によって生まれたレーテ共和国の2重構造になっていた。

やがてユダヤ人革命家カール・リープクネヒトとローザ・ルクセンブルクが結成したスパルタカス団が共産主義国家樹立のため武力蜂起を起こす。
だけど仮政府の社会民主党が軍を送ることで1ヶ月で鎮圧。
スパルタカス団もレーテ共和国も三日天下だった。
こうして社会民主党を中心としたワイマール共和国へと移行していくんだけど、ドイツ国民にはユダヤ人と共産主義に国を乗っ取られるところだったと恐怖したという。

ファシズムを産んだユダヤ人と共産主義者による大虐殺


バイエルン王国(首都ミュンヘン)はレーテ共和国の樹立で消滅したんだけど、そのレーテ共和国もワイマール共和国(社会民主党)によって倒された。


この混乱期に劇作家でユダヤ人のエルンスト・トラーが革命政府を樹立しようとするがすぐに鎮圧されている。

そうこうしているとスパルタカス団の生き残りで、ロシア出身のユダヤ人革命家オイゲン・レヴィーネ率いる共産主義者が革命を起こし、政権を奪取。


後期レーテ共和国を樹立する。
このレーテ共和国を討伐する軍が中央のワイマール共和国から派遣され、ミュンヘンは血の海となり、大虐殺をおこなわれたとか。
実はこの激動の嵐のなかに若きヒトラーもいたことがわかってる。
一時的とはいえ、ミュンヘンは共産主義者とユダヤ人に支配され、恐怖政治が敷かれた。

ユダヤ人革命家がレーテ共和国を樹立

この経験から、元々民族主義者が多い土地柄もあり、ミュンヘンでは怒りが大きな時代を作り出すことになる。
この時、ヒトラーはミュンヘン大学で反共産主義講座を受講しており、 ヒトラーの何かに魅力を感じた同じ受講者アントン・ドレクスラーがドイツ労働者党にヒトラーを誘う。

ヒトラーはここで頭角を表し、ユダヤ人を地獄に突き落とすことになるのだ。

ヴェルサイユ条約とハイパーインフレで醜悪な鬼が目覚める


一方、ワイマール共和国のドイツは第一世界大戦に敗北。戦後処理へと時代は変わっていく。戦争は終結したが勝者も敗者もズタボロ状態だった。


ドイツ抜きで決められたヴェルサイユ条約の条項は以下の通り

  • 海外植民地の没収
  • ヨーロッパでの領土の削減
  • 軍備制限
  • 賠償金1320億金マルク
黄色の部分がヴェルサイユ条約で削減された領土

実は当初、アメリカ大統領は敗戦国に賠償金を課すことをやめようとしていたが覆っている。
なぜ覆ったのか?

別の記事にまとめているのでそちらをどうぞ
>> なぜ大富豪モルガン家はナチスを誕生させてしまったのか?

当時この賠償金額は「天文学的」な数値だと評価された。

ワイマール共和国ドイツはとても払いきれないと拒否する。


そこで1923年フランス・ベルギーはドイツ屈指の工業地帯であり地下資源が豊富なルール地方を占領した。
ドイツはルール地方の労働者に抵抗運動を呼びかけ、参加する者は賃金は政府が保証するとした。

そうして財政破綻したことで空前のハイパーインフレが発生した。

当時のドイツの中央銀行であるライヒスバンクに国債を受けさせ、その結果、大量の紙幣を新規発行したため通貨価値が急激に下がり激しいインフレが起こったとされるが、ここまでのハイパーインフレは不可解で、怪奇現象とも言われるらしい。

1923年の7月22日付けの『ロンドン・デイリー・メール』紙によると「昨日までハム・サンドイッチがたった1万4000マルクだった同じ喫茶店で、今日はそのサンドイッチが2万4000マルクとなった」と報じてる。

ハイパーインフレによって札束がゴミクズ並みの価値しか亡くなったため、札束で遊ぶ子供達が現れた。
なんと物価が戦前の1兆倍にもなったという。
ドイツ中が生活に困窮し、国を混乱に陥れたユダヤ人への怨恨は根深くなっていく。


当然、民衆は生活できなくなり、餓鬼となった。
ワイマール共和国のドイツ国民は打ちひしがれていた。


その原因は、1859年に発表されたダーウィンの進化論にあった。
これは厳しい生存競争による自然淘汰に適用した種が選択されるという考え方。
これがさらに国家や民族といったものに当てはめる「社会進化論」へと発展していく。

社会が発展すれば、増大した人口を支える資源が枯渇する。そのため何らかの手段によって人口を調整する必要がある。

20世紀初頭勃発した第一次世界大戦はまさにそれだったのだ。そこで大敗北したドイツは自信をなくしていた。
ヨーロッパ各国はドイツから領土も資源、資金すら搾取していく。
もはや自然淘汰によって滅びゆく運命にあると。

しかし、そこでドイツ国民の胸中にあったのはボコボコと沸き立つユダヤ人と共産主義者への怒りだった・・・

背後からの一突きによるユダヤ人と共産主義への恨み

1914年から勃発した第一世界大戦でドイツ帝国は確かに窮地に陥っていた。

しかし、まだ最前線には200万近い軍隊が残っていた。
しかし、そこではなく、本国ドイツ領内で多くのユダヤ人革命家と共産主義者によって帝政は倒され、結果的に敗北した。

背後から刺そうとするユダヤ人

そして国内で虐殺行為で恐怖に陥れて弱体化させた。
おまけにヴェルサイユ条約で天文学的な賠償金を背負わされた屈辱・・・

全ては背後からの一突きが原因だとされた。
敗北のどくさくに革命を起こし国を搾取しようとしたユダヤ人というのが盛んに民族主義者から宣伝され、ドイツ国民の心に突き刺さっていた。

その社会情勢にうまく乗ったのがアドルフ・ヒトラー率いる国家社会主義ドイツ労働者党ナチスの台頭である。
ナチスはユダヤ人が国を荒廃させた!

純粋なアーリア人こそ国を強くする!
ユダヤ人は排除すべし!

演説のポーズを事前に練習するヒトラー


と言葉を熱弁したのだ。
それはまるで、自然淘汰によって滅びるのは我々ではなく、ユダヤ人だと言わんばかりに。
かつて共産主義者とユダヤ人革命家たちに翻弄され、餓鬼化したドイツ国民はそのヒトラーの言葉に酔いしれたことはいうまでもない。

ヒトラーによるユダヤ人への報復政策はこの先どんどんとエスカレートしていき、それはホロコーストという形で黒歴史を残すことになるだ。

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