【怪談】本能寺の蝿女

「でたっちゅうんは、まことか兄者」
見習い僧の涼水は、兄の涼雲と本能寺の本堂前の広場にいた。朝の日課である掃除をしていた時、胸のうちの不安を吐き出すように涼雲に駆け寄り疑問を投げかけた。
「知らぬ。宗鑑様はそんなことを言っとったようじゃがなぁ」
涼雲は全く信じていないふうな様子で竹ほうきではきながら、ぞんざいに言葉を放つ。涼水は最近、寺内で妙な噂になっている事変を聞きつけた。本能寺ではたびたび盗人に入られた事から、毎夜寝ずの番を二名当番制で見習い僧の中で回していた。一ヶ月ほど前か、そろそろ二十歳になろうかという見習い僧の宗鑑が寝ずの番をしている時だった。その夜、風が強く障子がガタガタと笑う不気味な夜だった事は確かだった。宗鑑は仄暗い境内の雰囲気に呑まれて恐怖のあまり、あらぬ音や声を聞いただけなのかもしれない。なにしろ、その日の朝、宗鑑の様子は尋常ではなかった。
夜半、本堂で勤学に励んでいた宗鑑だが、その本堂の建物の奥の渡り回廊先の常の間という離れ間から女の啜り泣く声が聞こえてきたという。涼水ははじめ、作り話じゃと決め込んで相手にしなかった。ところが、その後宗鑑以外の兄僧達も聞こえたとか、奇怪な噂が後を絶たず、ついに涼水の当番を迎える日が回ってきて、不安な朝を迎えていた。
「宗鑑様は何を見たんじゃ? 兄者。何か聞いとるか?」
涼雲は嘲笑いながら、
「いや、奴は闇夜で何も見えん廊下を覗いて誰もおらんと独断してそれ以上何も見とらん。要は怖がって何も調べとらんかったのよ。和尚に朝報告して『何の為の寝ずの番か!』って怒鳴られとったわ。そりゃそうじゃ。それが盗人じゃった可能性は捨てきれん。じゃが翌朝、何も盗まれとらんかったらしいわ」
盗人が何も取れなかったとは思えない。震えていた宗鑑程度の見張りだと自由に動き回れたはず。だとするとやはり、啜り泣く女の声って一体誰なのか?
「ちゅう事はそこに亡霊が揺らめいとったんじゃなかかぁ?」
涼水は不安を拭い去れずにいた。
「ありゃぁ、宗鑑様の勘違いじゃ。気にするな」
笑い飛ばす涼雲に、涼水は苦笑いを浮かべる以外なかった。
「そうでもなさそうじゃぞ! 小僧や」
涼雲と涼水の後ろから突如、不気味な声がして二人はギョッとして振り向いた。そこには鼻が高く、眼がくりんと出目金気味の、恰幅の良すぎる旅装の僧が立っていた。全身埃まみれのその僧は悪戯っぽい笑みを滲ませ、怖がらすような声色で声をかけた。
「御坊は?」
涼雲が会釈して声をかけた。
「わしゃぁ、幽玄と申す。諸国をぶらぶら旅しとる僧じゃ」
涼水はその言葉にハッとして首を垂れる。
「今夜はご一緒に寝ずの番とか。幽玄坊、よろしくお願いします」
涼雲は何も聞かされいなかったらしく、慌ただしく首を垂れた。
「おお!楽しい夜になりそうじゃなぁ! 亡霊となるとウキウキして寝られんわ!」
幽玄は笑いながら鼻の穴に人差し指をねじ込んでホジホジしながら答えた。
——————堂々としたもんじゃのう!


流水はその御坊の指の傍若無人ぶりに目を丸くする。何しろ、第一関節までねじ込んで鼻をほじる様に目を離すことができずにいた。何もしなければ高僧に見える幽玄だが、幻想を自ら打ち破るように、第一関節までゆうにズッポリしていたからだ。しかし、涼水はそれにも増して先ほどの幽玄坊の言葉が気になっていた。
「御坊はなぜ、そうでもないとおっしゃったのじゃ?」
幽玄は口の端に薄ら笑いを浮かべ、鼻から人差し指を引っこ抜くと懐から紙を取り出し、その指を拭いた。涼水はてっきり丸めて”ピン跳ね”すると睨んでいたが、意外にも、そこだけ”貴紳”に振る舞う幽玄に笑いそうになる。
「わしはなぁ、揺らめく亡霊や妖怪を見抜く力を備えておるのよ。そのわしが見るところによると、本能寺の奥から妖気が渦めいておるわ。こりゃぁ、今夜何か起こるやもと思うとったところよ」
「幽玄坊、亡霊や妖怪を見抜く力とは修行で身につけたものでしょうか」
生真面目っぽい涼水を揶揄う様に笑いながら、
「そんなわけないじゃろう。生まれ持ったもんじゃ。これは!」
涼水は、幽玄坊が余程過酷な修行を積んできた苦労僧だと思っていただけに調子抜けした。
「え? ではなぜ僧に?」
「ハハハ、そりゃあ、この格好でいるだけで有難い存在じゃと思われるからじゃ。こんな生き易い事はないわ」
涼水は呆気に取られていた。一見高貴な僧に見えるのに話せば話すほどボロボロと竹の皮のように剥がれ落ち、中身が薄い僧じゃと思えてきた。幽玄はそんな涼水の気持ちを察してか、やや口の端に薄ら笑いを浮かべて、
「わしは、其方が目指すような高僧ではない。それどころか、ろくな僧じゃあ、ありゃあせん」
幽玄坊は笑いながら続ける。
「じゃが、この能力だけはまことじゃ。今夜は楽しみじゃなぁ。あ、和尚はどこじゃ?」
幽玄はそれだけいうと和尚のいる本堂の方へ歩いて行った。
涼雲は慌てて涼水に問いただす。
「どういうことじゃ、今夜はわしとそち、それに幽玄坊の三名で寝ずの番か?」
涼水は竹ほうきではきながら涼雲に視線を投げる。
「そうじゃ。和尚がさっきわしに言うたのよ。亡霊騒ぎで不安がるわしらのために、幽玄という僧を呼び寄せたと。それを兄者に告げようとしておったのよ」
涼雲は興奮を抑えられない様子で
「こりゃ、亡霊を退治できる幽玄坊と一緒だと心強い。亡霊なんぞ見た事ないがどうやら拝めそうじゃなぁ。して涼水、お主存じておるか? この本能寺は五回目の建立なのじゃ」
「え? 五回目? そりゃどういうことじゃ?」
「過去四回、焼け落ちとるのよ。この本能寺は! どうも呪われておるようじゃ。『能』の字はヒが二つあるじゃろう! これが『炎』となっとるんじゃないかと影で噂があるくらいじゃ。それに女の声が聞こえるっちゅう常の間は、ちょうど百年前、織田信長様がご自害されたところじゃ。それが四回目の焼失になっとる。なんかゾッとするもんがあるのう」
涼水は本能寺の呪いに、不安の色を滲ませ、思わず固唾を飲んだ。

そろそろ日暮れどき。蒼空から夕景に変わり、その日は何かを暗示するかのように西空が、鬼灯のような真っ赤な色に染まった。そして逢魔の刻、どす黒い血に染まったような怪しげな空が本能寺の空に広がっていた。
カァー、カァー、カァー……
本能寺の空に烏が旋回しながら舞う。やがて満月を覆うように暗雲がたなびき、すっかり分厚い雲がかかると、しとしとと雨が降り、やがてそれは鬼雨となった。そして天が悲鳴をあげるかのように稲光と共に唸り声をあげた。本堂で涼雲と共に写経をしていた涼水は、全神経を集中していたのは、写経ではなかった。当然、奇妙な音がしないか索敵に集中していた。しかし、聞こえてくるのは激しく打ちつける雨や稲妻の轟音、そして幽玄坊のイビキだけだった。
「何かあれば起こせ!」
と言付け、そのまま寝入っていた。
「呑気で良いのう、幽玄坊は! 楽しみじゃと言うとったのにこれじゃ! しかし、気持ち良いくらいの立派なイビキじゃなぁ」
涼雲は呆れる様子で言葉を捨てる。しかし、涼水はいざとなれば幽玄坊に頼れるので、いくらか弦を緩めることができた。涼水は朝、涼雲から本能寺の呪いの話を聞いた刹那、何かしら違和感を覚えたことを思い出していた。
「そういえば、なぜ女の声なのじゃ。織田信長様の亡霊ならば、男の声じゃないか?」
涼水は涼雲の言う『本能寺の呪い』は今回の件とは違うのではないかとふと頭をよぎる。
「涼水、お主は出家して半年じゃったなぁ。わしは数年前からここにいるから知っておるが、ちょうど一年前に重い病を患った女子が和尚の医術を頼りに、この本能寺に身を寄せておったらしい」
話している涼雲の顔にサッと仄暗い影がさす。その刹那、冷たい空気が張った。
「その女子は何かの拍子に誤って蝿を飲み込んでしもうたらしい。高熱が出てなぁ。和尚にも手の施しようがなかったそうじゃ。その女子は毎夜うねり声をあげて苦しみ、やがて長い黒髪が不気味にも抜け落ちてなぁ。その奇病で女の顔は赤く腫れあがり、およそ人間とは思えぬ顔に変形したそうじゃ。誰も近づけんようになって悶えながら狂い死にしたとか……」
涼雲の口から奏でる恐怖の戦慄が辺りを静寂にさせる。その刹那、落雷して轟音が響く。
「ひゃあああ」
涼水は驚いて悲鳴をあげる。涼雲は猜疑に満ちた顔つきで続ける。
「そこで奇妙な話があってなぁ、あの和尚が死病を患う女に誰も近づかせようとはせなんだのよ」
涼水は何か胸に引っかかるものを覚える。小さな殺生すら嫌い、弟子に厳しく生の大切さを説き、思いやりあふれる和尚だと思っていただけに確かに疑問が残る。通常、死にゆく妻に、旦那を会わせ、最後を見届けさせようと和尚ならするだろうと思ったからだった。
和尚はなぜ逆に遠ざけたのか。死病が自身を呪うのを恐れたのか。だとすれば……
————ややガッカリじゃなぁ。
涼水は和尚を崇拝していただけに、やや人間臭いところを目撃したようで軽蔑が混じった怪訝の色が滲み、やや口をとんがらせた。その時、ちょうど幽玄が腹をボリボリかきながらムクっと上体を起こした。
「何じゃ、何事か?」
「あ、いや雷で」
「……左様か」
それだけ言うとまた幽玄は寝てしまった。
三人のいる本堂を鬼雨の音と、稲光や轟音、そして幽玄のイビキだけが覆っていたが夜半過ぎ、ようやく雨がおさまってきたかと涼水が気づいた時だった。突如、涼水に耳に届く雨の音の合間をぬって、思いもよらぬものが聞こえた気がした。
———空耳かもしれん。
涼水はそう思ったが、どこかしらで何か聞こえたかもしれないという期待の様なものが引っかかった。いや、そうではない。本当に遠くの方で女子の啜り泣く声が聞こえてくる。
うぅ……うぅ……
涼水の全身の毛が逆立ち、鳥肌が走った。
——————き、聞こえる……

涼水は涼雲に恐怖の色と共に視線を送る。涼雲も緊張の糸を張っている空気感が伝わってくる。
「な、泣いておる……、何奴かが……。いや待った! それだけじゃ……」
涼水が障子の向こうの音に耳を傾けると確かに誰を呼んでいるかのように聞こえる。
「七……兵衛?」
涼水の声に涼雲がギョッとする表情を浮かべる。いつの間にか幽玄のイビキが止まっていた。ふと見ると寝転がったまま、カッと眼を剥いて天井を凝視していた。
「七兵衛、七兵衛と泣いておるぞ。凄まじい妖気じゃ。い、いかん! 近づいてきとる」
幽玄が上体を起こす。その時、風が行灯の火を和す。そしてスッと消えて一筋の煙をくゆらした。本堂内は仄暗くなり、周囲は何も見えない。先ほどまで降っていた雨がやみ、雨雲が引いたのか、障子に月明かりが当たり、淡く光る。涼水の額から妙な汗がしずり落ちる。本堂の外に群生する竹林の梢が風でなびき、ザアザアと音をたて気味悪い空気がみなぎる。涼水は、妖怪に囲まれているかのように思えるのだった。蛇に睨まれたように身がすくみ、冷たい汗が吹き出す。そして身体中から体温が消え失せた。
「醜悪な憎悪が亡霊ではなく、妖怪に化けさせたようじゃ」
幽玄坊の言で緊張と恐怖が入り混じる空気が張る。幽玄は障子近くにいたがゆっくりと後ずさるたびに板間が軋むギィという音が本堂に響き渡った。
「ゆ、幽玄坊、七兵衛というのは常の間で、き、奇病のために、へ、へ、変死した女子の旦那で。旦那も誰も近づけず、お、女子は悶え苦しんで死んだとか」
早口に涼雲が言おうとするが、恐怖のあまり、口が絡まり上手く話せない。幽玄の顔が曇る。
「じゃとしたらわしらじゃ、妖怪化した女子を止められんかもしれん。一時しのぎできそうな札は持っとるがなぁ……、あぁ、すぐそこまできとる」
その刹那、揺らめく女らしき影が障子に写る。しかし、雲の流れが早く再び月を覆い、月光がかげる。
カサカサカサ……
障子のすぐ向こうに何かがいる。涼水は固唾を飲む。そして再び雲が流れ、淡い月光が差したその刹那だった。化け物の横顔はおよそ人の影とは思えぬ輪郭を写し出していた。
「ひゃあ!」
涼水は悲鳴にならない悲鳴をあげ、あんぐり口を何とか両手で覆い隠す。影が物音に気付き、本堂へ向く。
「七兵衛様……、そちらにおいでに? 七兵衛様」
女のか細い、涙声が聞こえる。
……顔が熱いぃ。痛い。ひぃ……七兵衛様!お、お助け下さいましぃ……
その女の首の影はまるで蝿のように複雑怪奇な動きを見せている。戦慄が涼水の背筋を貫いて走る。ゾ〜ッと全身の毛が逆立つ感覚を覚える。
七兵衛様……、く、苦しい……、助けて下さいまし……七兵衛様ぁ
妙なほど背を曲げた女は犬のようにガリガリと、障子で両手の爪を研ぐような素振りを見せながら不器用に障子を開き、ギョロッと中を覗き見た。長い黒髪の合間から覗くその眼は醜悪な蝿の眼をギョロギョロさせていた。その刹那、
「ぎゃあああああああ」
涼雲が悲鳴をあげて倒れた。女はガッと障子を開け放つと、蜘蛛のように四つん這いでガサガサと這い進んできた。女は蠅の様な頭をもたげると泣き叫ぶ。
七兵衛様ぁ、七兵衛様ぁ……
蝿の両眼に怒張した毛細血管を走らせ、口から血がしずり落ちる。女はカクカクと、昆虫のような不気味な首の動きを見せると、既に気絶した涼雲と、水揚げされた魚のようにただパクパクと口を動かすだけの涼水をギョロギョロ見ると、けたたましい声をあげながら牙を剥いて猛進してきた。
七兵衛様ぁ……ギャガガガガガガガガァ
黒髪の合間から覗く蝿の眼から獰猛な殺気を放つ。
「ギャアアアアアアア」


凍りつく涼水はあまりの恐怖に悲鳴をあげながら白目剥いて意識が遠退いていく……。
「コラァ!涼水寝るな!涼水ぃ!」
遠くで何やら幽玄の声がするがどんどんと声は消えていった……。

小鳥のさえずりが涼水を優しくなでる。おもむろにじょうたいを起こし、頭を振って意識を取り戻す。ハッと最後の瞬間が涼水の脳裏に蘇った。
「夢だったのか?あれは?悪夢だったのか?」
何やら現実だったのか、それとも寝ずの番なのに寝てしまったのか、涼水はわからずにいた。
「主らは気絶したのじゃ。あの蝿女に喰われる寸前のところでわしの封印の札が追いついたのじゃ。それで妖怪は消えた」
例のごとく鼻をホジホジしながら、眠そうに幽玄が話す。鼻から指を引っこ抜くと上物が取れたのか、やや顔をほころばせ、懐から紙を取り出して拭う。
「危なかったぞ。お主ら気絶なんかするもんじゃから!」
本堂へ和尚が入ってくる。
「やや、剛勇のお目覚めじゃな?」
和尚は気絶した涼水と涼雲を見て笑みを浮かべる。
「和尚、約束の金は?」
幽玄は和尚に声をかけた。
「おうおう、十両じゃなぁ、ほれ、これじゃ」
和尚は懐から十両出して幽玄に手渡した。
「確かに頂戴いたした」
幽玄は下品な笑みを浮かべて懐に忍ばせた。涼水はやや不快な思いに駆られる。僧たるもの、無償の善を施すことこそ最上の喜びとすべきなのでは! 金を取るなら俗世と変わらぬではないか! 出家した僧がすべきことではないという崇高な想いがあったからだ。
「和尚、此度の件、一年前、女子が狂い死にした際、旦那の七兵衛に会えずに死んだ無念と、会わせなかった僧への憎悪が化けたものじゃ。これは和尚にも非があるぞ」
和尚は幽玄の言葉に坊主頭をさすりながら、
「あぁ、確かに。良かれと思うて、人命を優先したことが災いしたようじゃ。実は七兵衛にも一目合わせてくれとせがまれたのじゃ。じゃがわしは七兵衛が美しい妻の面影を心に宿しているのであれば、見せるべきではない、其方が双方にとって良いと判断したのじゃ。じゃが、七兵衛への情と、会わせぬわしへの憎悪が物怪となって現れてしもうた。わしもまた修行が至らぬようじゃ」
涼水は七兵衛とその妻の想いの両方を両立させようとした和尚の優しさと熱い非情に、一瞬でも和尚を疑った自分を恥じた。
「七兵衛にはよく妻を供養するようお伝えくだされ。そうすれば怨念も消えまする。それじゃ」
それだけ言うと幽玄は去っていった。涼水は待っていたかのように、たまらず和尚にくってかかる。
「和尚、幽玄坊に助けられた身で言うのも何ですがなぜ金を? あの様子ではただ吉原で宴会するだけで大事な金が消えまする。あれだけの金があればもっと他に役に立てまする」
和尚は涼水を見て微笑んだ。そして幽玄の後ろ姿に視線を移しながら、諭すように涼水に話す。
「幽玄はなぁ、あの金で遊ぶわけではない。まぁ多少は遊ぶかもしれんがなぁ。あのような風貌で、およそ高僧という言葉の真逆にいる僧には見えるがなぁ。幽玄は旅した先々で見かけた孤児や捨て子を集めて育てておるのよ。その為にはそれなりの金がやはり必要なのじゃ。お経をあげて子が育つなら安いもんじゃが、そうもいかん。幽玄にとっては亡霊や妖怪などよりもよっぽど人間の子の方が厄介なんじゃて。ホッホッホ」
涼水は和尚の言葉を聞きながら、小さくなっていく幽玄の後ろ姿をずっと眺めていた。そしてまた会って教えを乞いたいと思いなすのだった……

==ちょこっとお知らせ==
当サイト管理人の私が、歴史長編小説の連載を始めました。
本能寺の変を大胆に新解釈しての物語です。
是非チェックしてやってください。
【よんどころない事情で・・・】